揺れる光ない海の底

:::揺れる光ない海の底:::

01. 『朝方』

信じているというよりも
信じていたという言葉の方が
こんなにも 重いのはなぜでしょう

1人の人と別れたのに
3人一気に失ったみたい
恋人で 親友で 兄弟だった
こんなにあっけなく壊れてしまう

土曜日の新聞が届く音に
驚いてコップを落とした
それでも 割れないプラスチックに
あたしも こんなものかと思った

02. 『世界』

あたしの世界と あなたの世界を
つなげてしまいたいと 思うくらい
どうしようもなく惹かれたなら
あたしは川に橋を渡らせて
あなたの世界につながる道を
時間がかかっても 作るでしょう

こころがこの指の隙間から
そうっと逃げていかないように
寄りかからずにそばにいて
あなたのこと 見ていたい

03. 『How can I say 』

たとえばあたしが 今死んでしまったなら
あなたにはとても 悲しんでほしい
そのあとしばらくは 何にも手につかないで
あたしのためだけに 過ごしていてほしい

04. 『揺れる光ない海の底 』

あたしはいつでも 自分だけ大事にしてたけど
あの人を それでも失いたくはなかったの
もう二度と 大切な人と別れたくない
もう誰も いなくならないでほしい

05. 『ふたつのこころ 』

考えずにページをめくるこの指先も
よくできたカメラのように動くこの目も
時々自分のものかどうかわからなくなる
だけど他の誰のものでもない

この薄い皮の下には血が流れていて
図鑑で見た通りに絶えず動いてる
まるで体と頭に心はふたつあるように
壊れるまで続くことを知ってる

悲しみはいつか麻痺していくことを
悲しみの中でもわかるように

自信がない日も見失うときもいつでも
磁石が指すように 求める場所にはたどり着ける
ふたつの心でいつも 強く願うなら

06. 『ナンを食べに行く』

12時前 ナンが食べたくて
この際辛口食べてみる
辛くて目がうるんでも
誰も気にしない あの席で

教えてくれたあの店には
明日からはもう行かない
夜は彼女と いつも来てると
その言葉が耳に張り付いてうるさい

混みすぎたら 僕たちが困るから
誰にも教えてないと言ってたのに

07. 『ビール』

ビールはうまいとあなたは言う
とりあえずビール」と席に着いて言う
まずは乾杯 何に乾杯?
久しぶりに会えたこと

泡に口つけ 喉開けて飲む
それを見ながら ひと口だけ飲む
苦くない? 苦くないよ
苦いのは あたしだけか

いつの間にか 話しながらも
本腰入れて あたしは食べてる
変わってないな 変わってないよ
ただ髪を 切っただけ

忘れたふりをして 話を続ける
それが優しさと言うなら
受けて立とうと 今決めたから
あなた引いた その線には
あたしはもう 触れずにいよう

08. 『花火』

夏に買いだめた花火の袋
あれからずっと ベッドの下で
約束の12月を待っていた

満月にかかる雲の流れが
いつの間にか 速くなって
冷たい風が耳の後ろにも 吹いてくる

くじ引きみたいに 取り出した
小さくなってく 線香花火
すぐに火がくすぶり 消えてしまう
短いからきれいなんてさみしい

秋を飛び越えた花火が
夏をもう一度呼び戻してくれるなら
最後の火花が落ちてく時に
悲しがるふたりなのに

09. 『住宅』

あと少し 半年もすれば
あの家はもう消えてしまうの
脱皮したあと残る抜け殻が
風に飛ばされてしまうみたいに

ねぇ、ひとつも寂しさを覚えないままで
あたしたちは 笑っていられるとおもう?

家から離れていくこの車で
前を向いている あなたを見ていた
ドナドナって歌に出てくる牛は
戻る場所がないことを知っていた?

10. 『一日 』

白い壁紙の部屋に住んでいる
たまに世間から切り離される
あなたがいなくなった時のために
避難訓練をしているみたい

酔って電話してきたあなたは
その時にしか言えないことを
好き放題言って 眠ったけれど
あたしはあれから 眠れないまま

だけど

11. 『手を振る朝 』

ふと目覚めた その時から
悲しいと思う朝は
あなたが夢の中に
出てきて いた気がする

横に寝転がる 鼻と目の間
水たまりできて 目が覚めた
もう一度だけ 会いたくて
追いかけるように 眠るけど